「今日は木曜日か、、、。昨日は休み明けで忙しかったから、今日はやっぱり暇だな。それに雨降りだしな。仕方ないか。

こんな時にお客さんが来てくれたら念入りに髪を切るんだけどなあ。」


理髪店を経営してる鈴木は、まだ開店して半年ほどであるが、ぼちぼち常連客とも話すようになり、手応えを感じはじめていた。


その常連客の中でも矢追純次とは特に話が合い、いつも時事ネタで盛り上がる。


昨日、矢追が来店し、UFOの話題で話が弾んだ。

「最近、アメリカの国防総省の関係者とか軍の人たちがUFOについてやたらと発表してるね。なんかありそうだよね。少しずつ小出しにしていてさ。

ついに宇宙人がいる!って話になるんじゃないかな?

菅総理がさ、コロナの後に今度は宇宙人の緊急事態宣言出したりして。」


「宇宙人はいるに決まってますよ。僕らだって宇宙人じゃないですか?見方を変えれば。

いても全然驚かないですね。僕は」


「鈴木さん、問題はさ、何しに地球に来るんだ、って話なんだよ。地球の侵略なのか、ただ珍しいから調べに来てるのか、って話。

よくさ、地球人をさらって人体を調べるって言うよね。

まずは、それが彼らの目的かな?

俺はさ、美人の宇宙人にさらわれてもいいなあ。そしてさ、美人ばかりの星で暮らすんだよ。」

「食べられるかもしれませんよ!その美人の宇宙人に!

そうですね。もし宇宙人にあったら、何しに地球に来たか僕は聞きますよ。」


鈴木はいつもお客さんとこんな話で盛り上がると理髪店の仕事も楽しくてまんざらでもないと思う。


「こんにちは、、。髪を切っていただけますか?」


「いらっしゃいませ!こちらにどうぞ。」


今日一人目のお客さんだ。

しかもはじめて見る顔である。

鈴木は、はじめてのお客さんには常連になってもらいたいと言う下心を見せないように、あまり話かけず、丁寧にカットするように心がけている。

「今日はどのようにしますか?」

「皆さんと同じようにしてください。」


なんか少したどたどしい日本語だが、お客さんの中には海外の人もいるので、特に気にもしないで仕事を始めた。


「この人は髪が多く、剛毛だなあ。矢追さんも多いけど、それ以上だなあ。この人終わったらハサミを研がないとな。」

普通の倍の時間をかけてようやく耳の辺の髪を切り終わり、頭の後に櫛を入れはじめた鈴木は、頭頂部から少し後のツムジの辺りに何か違和感を感じた。

「あれ!ここになんか黒い筋がある。えっ!何これ?」

櫛で髪をかき分けて見ると、そこに約10センチほどの黒い筋が見える。しかも、その筋がパックリと3センチほどの幅で割れて開いている。これはもしかしたら大怪我の跡か?


お客さんは鈴木のこの発見に気がついていないようでじっと眼をつぶって大人しくしている。

鈴木は黒い裂け目の周りの髪を切りながら、徐々に櫛で髪をかき分けて筋を良く見えるようにした。

何しろ今まで見たことの大きくて深い傷のような筋である。

よく見ると皮膚が裂け、その開いたところは、真っ暗な淵のように落ち込んでいるようだ。

「えっ!頭の中が見えるの!まさか!そんなバカな!なんだよ、この人」


お客さんに悟られないように手を動かしながら、さらに髪をかき分けて黒い筋を覗いて見ると、裂け目の奥の黒い淵のかなり奥の方にキラキラと輝く光が微かに見えている。

それはまるで、宇宙を覗き込んでいるかのようだ。


「えー! この人何?  ロボット?  まさか!

どう見ても人間だよなあ。なんだろこれ?ドッキリカメラ?」


お客さんは顔の表情を変えることなく、眼をつぶっている。


「それにしてもなんでこんな奥に光があるのかな?普通あんな奥だと脳みそがあるはずだよなあ。なんで空間になってるの?」


鈴木は、後髪を切りながらその裂け目にそっとハサミを近づけて見た。


その時だった。

何かまるで磁石に引きつけられるようにハサミがするっと指から外れて黒い淵の中に吸い込まれてしまった。

なんとハサミはその淵の中に入り、消えて無くなってしまったのだ。

「ああっ!ハサミが飲み込まれた!」思わず声を上げた鈴木。

するとお客さんが眼を開けて、独り言のようにつぶやいた。


「しまった。ボディスーツの入り口が全部閉じて無かったようだ。」


それを聞いた鈴木は確信した。

「この人は宇宙人なんだ!

本当はどんな形をしているかは知らないが、この人間のような外側は作られたボディスーツなんだ!」


平静さを装い髪を切り終わった鈴木は、恐る恐る宇宙人と思われるお客さんに話かけた。



「あのー、、、、宇宙人さんですよね?

ハサミ、返してもらえませんか?」




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槙島源太郎

作家兼発行人

年齢、住所不詳。謎に包まれる遅咲きのユーモア小説作家、槙島源太郎が贈る笑いの数々。

彼は中高生の頃に自身のユーモアセンスに気づく。大学時代もショートコントなどを書いていたが、進路は真面目なメーカー勤務を選ぶ。

ビジネス作家として数冊の本を出版した後、眠っていたユーモア感覚が目覚めて創作活動を開始。

現在まあまあ週に一度のリリースを目指して書き続けている。

夢は世界を笑いに包み、平和を取り戻す脚本家兼映画監督。