未婚の桑野繭子は、銀行の同じ支店に勤めている既婚の上司の杉野幹夫のことが好きで好きで好き過ぎてしまっている。

杉野の野太い声、手の甲の毛、首筋や、時々腕まくりした時の腕に浮き出た血管。

ペンを握るぎこちない指先がたまらなく母性を刺激されて、すれ違い様に匂う体臭にクラクラさせられる。


一方、杉野もそんな繭子のことが気になっていた。



杉野はエリート総合職で妻や子供を鹿児島に置いて一人暮らしをしている。


繭子は、杉野が自分に気があることに気がついていたが、同じ支店の萩野月子のこともちょいちょいこっそり見ていることに気がついていた。


「月子なんて、男の目線ばかり意識して!本当は性格最悪なくせに。あんな女に杉野さんを渡せるもんですか!」


繭子はついに杉野独り占め作戦を決行した。

「あの、、、杉野さん、今日よかったらこれ差し入れですので夕飯にして食べてください!」


「え!いや〜悪いね!いいの?何かな?」


紀伊國屋のオシャレなエコバックの中身を見ると、中身はピーマンに挽肉、豆腐、ネギ、茄子と『味の元々』の青椒肉絲と麻婆茄子の即席ルーが入っている。

「ありがたいけどさ、僕は料理が下手でね。明日土曜日だからスマホで調べて作ってみるよ!ありがとう!」


「そ、そうですか!ご迷惑でしたか?

あの〜、よかったら私、今日暇なのでご自宅にお邪魔して作って私も差し上げます!

あっ、間違えた、作って差し上げます!」


と言うことで上手いこと杉野の家に上がり込んだ繭子はすっかり杉野と仲良くなってしまった。




こうして、月に二、三回お泊まりして愛しあっていたが、今月は杉野の妻が上京して二週間ほど滞在してたので、会えない日が続いていた。


恋しさは募るばかり。


奥さんと二週間も一緒にあの部屋にいる杉野に我慢できない。


しかも、その間、支店の中ではまたちょいちょい萩野月子の後姿を盗み見てる杉野を見てしまって嫉妬の心が桜島噴火状態になっている。


実は、杉野を好き過ぎている繭子は奥さんが来ることを知って、居ても立ってもいられず、杉野の部屋にある仕掛けをしていた。

それはベッドの下にピアスを片方だけ置いていたのだ。


妻の愛子はそれを見つけてしまった。


なんとか誤魔化した杉野だったが、繭子の余計な嫉妬心に怒りが込み上げてきた。



「繭子!なんであんなことしたんだよ!許さないぞ!」

「ご、ごめんなさい。だってあなたがこのベッドで奥さんと寝てるかと思うと、、」


「寝てないよ!もう!おれは本当に怒ったからね!
お仕置きだぞ!」

杉野は、妻が使ったフェイスタオルとバスタオルを出して、

「今日はこれ使えよな。つ、妻が使って洗濯してないからね。」


「ひぃー!許してください!」


「それからな、食事はこの箸とお椀な!つ、妻のやつだけど。」

「やだー!許してください!無理、無理です!」

杉野はそれでも許さず、ついに最後の拷問用具を繭子の前に差し出した。

「もっと懲らしめてやる!これで歯を磨けよな!これは月子の、、あっ、間違えた!妻の使った歯ブラシだ!!!」


「え!今なんて言ったの?

何よ!それ!今、月子って言った!

あなた、奥さんじゃなくて月子を部屋に呼んでたのね!もう!許せない!絶対許さないからね!」


拷問はその後、入れ替わってしまった。

夜、杉野の部屋には縛られた杉野を叩くムチの音が響いていた。


繭子は縛って浮き出た杉野の腕の血管を狙ってムチを打ち続けていた。


「ヒィー、ごめん!もうしません!許してよ、月子!」








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槙島源太郎

作家兼発行人

年齢、住所不詳。謎に包まれるユーモア小説作家、槙島源太郎が贈る笑いの数々。

ビジネス書の作家としても活躍中。

現在まあまあ週に一度のリリースを目指して書き続けている。

夢は世界を笑いに包み、平和を取り戻す脚本家兼映画監督。